研究内容
昆虫の生態
「Truth is stranger than fiction 事実は小説より奇なり」とは,アメリカ人作家マーク・トウェインの有名な言葉ですが,地球上で最も多様化した昆虫の生態は,小説をはるかに超えるほど奇想天外なものが少なくなく,これまで我々の好奇心を刺激してきました.しかしながら,我々がこれまでに明らかにしてきた生物種,さらにはその生態は,全体のほんの一部に過ぎず,驚くべき発見がまだまだ眠っているにちがいありません.また,生物多様性の減少が地球規模の問題となっている今,生物を保全するための基礎的な知見を収集することが求められています.私はハンミョウ科昆虫を中心として,その知られざる生態の解明に取り組んでいます.
ハンミョウは一般に卵から羽化までを土壌中で過ごすことが知られていますが,私たちの研究によりシロスジメダカハンミョウという琉球列島に生息するハンミョウは湿った腐朽木で過ごすという特殊な生態を持つことが明らかになりました(Yamamoto et al., 2018).
昆虫の系統地理
生物はいつどこから来たのだろうか?これは生物学の大きなテーマのひとつです.生物の分布は,その生物の系統進化,生理的特性,気候変動や地史など,実にさまざまな要因によって決まっています.その要因を明らかにすることは生物多様性が創出されてきたかを考える上でも重要です.私は生物がどのような歴史を経て現在の分布になったか,それが気候変動や地史などとどのように関係しているのかの解明に取り組んでいます.とくに琉球列島の島々に分布しているハンミョウに注目し,分子系統学的手法を用いて研究を行っています.
昆虫の体色と進化
動物は実にさまざまな体色や模様をもっています.そのような体色は,どのような機能をもち,またどのように生じたでしょうか?この問いは、生態学の古くからの重要なテーマであり,生態学や行動学,遺伝学などさまざまな分野において重要な成果をもたらしてきました.ハンミョウ科昆虫は,その体色は種間や一部の種内で極めて多様であり,体色の機能と進化を研究する上で,格好の材料を提供しています.私はハンミョウ科昆虫における体色の進化と機能,そしてそれがどのように種分化と関連しているかについて研究を行っています.